海の見える街

意味とか価値とか、そういうのがあると最高に良い

2016-05-01から1ヶ月間の記事一覧

無題

自分をここに繋ぎ止めているのはいつだって自分ではない誰かだ。 追記 : 見よ!この世で最も醜悪で下劣なこの脅迫を!嗚呼目も当てられぬ!驚くなかれ、この者もかつては真理の深淵を覗こうと勇んだ若人であったのだ!

拝啓

拝啓酒や煙草への憧れは、わからないから輝いていた。 香水のにおいを振り撒いていた近所のお兄さん、あなたはとても格好よかった。いつかわかると信じていたその香りの魅力を、私はついぞわかることはなさそうだけれど、あなたのにおいは今でも鼻腔をくすぐ…

三月の化石

「私はあの子になりたい」 三度目の春に彼女はそう言った。 「ぼくはずっと海が見ていたいな」 吐く煙は細く、淡く。油絵の勉強と称して行った植物園には、ネモフィラの花が咲いていた。 「学者なんて最低な生き物よ」 そう言って彼女は煙草を一本ねだった。…