海の見える街

意味とか価値とか、そういうのがあると最高に良い

拝啓

拝啓

酒や煙草への憧れは、わからないから輝いていた。
香水のにおいを振り撒いていた近所のお兄さん、あなたはとても格好よかった。いつかわかると信じていたその香りの魅力を、私はついぞわかることはなさそうだけれど、あなたのにおいは今でも鼻腔をくすぐります。
私へ、今の私は君の望んでいた人間ではないのでしょうね。君は私を許さないかもしれない。でもね、今私はとてもしあわせです。とてもとても。君には想像もつかないでしょう。だいすきなひとたちと、とてもとても大事なひとに囲まれて、しあわせを離さないように必死な私のことなんて。私はそれがすこしだけうれしい。君の知らないことが今の私にあることが喜ばしい。だってそれは私が前に進んでいる証だから。
許せる日は来るよ。大丈夫。君は君を殺せない。だから安心して、思いきり希望と絶望とを繰り返してください。君の喜びも、焦りも、失望も、すべて祝福される日が来るよ。だからどうか永遠を信じることだけはやめないでください。そうすれば、君はどこへだって行けるし、何にだってなれる。誰かになりたいという憧れを、どうか捨てないで。
愛してるよ。

敬具