その果物は甘いそうです。
教えてくれたのは誰だったかしら?
友人だったのか、両親だったのか、恋人だったのか、
はたまたカミサマだったのか、今ではもう覚えてないけれど、
その果物が甘いことを私は今のところ信じています。
「三口齧ると死んでしまう、そんな果物なんだ」
友人か両親か恋人かカミサマのどれかがそう言いました。
「それでも、甘いのでしょう?」
私が訊くと、
「甘い」
ただ、それだけ。
訊きたいことがたくさんあった。ある。あります。ありました。
栓のない思考は病院の壁にペンキを塗ります。
「ありがとう」
誰かが今日もそう言って、果物に歯を立てるのです。