海の見える街

意味とか価値とか、そういうのがあると最高に良い

季節外れの花嫁 君は春と踊る ほどけていく間違い 機械の絨毯 何にもなれないぼくを 君は どうして救ったのかな 気が触れたら、おしまい 気が触れたら、おしまい

水曜日の冷凍室には不鮮明な蓋然があって、時折どこかのクジラと共鳴しているって話、あなたは聞いたことある? よく出来た頭、¬整序されるべき i、5、7.8、3、909、えっと、それから……、そう、お隣の**さんーーーー。

雑記のような何か

男は筆を取り、先ずその過剰な自意識を以て彼の懶惰な生活を滔々と記し始めた。努めて自罰的に、デカダンを夢見て。そんな児戯のような露悪が、男の唯一の特技であった。男はこれを芸術と思いつつ、表面上は否定してみせた。「こんなものは、ただ/\、悪趣…

雪上の寿命

罪を暴かれた処女の厳密性を、一体誰が知り得ようか、漂うだけの沈丁花の人格を、全体誰が知り得ようか、一杯の粗目のような書物に、私という鉱石というにはあまりに粗悪な、それでいて高邁な一点が記述するには、おそらく清廉さが、あるいは潔浄さが足りな…

貝殻とキリン、あるいは紫陽花

この病熱のままで、揺蕩っていたい、花の名前を当ててみせて、痛いのに慣れた君の身体は、ゆっくりとほどけてしまった、かみさまのあそびを覚えたひとから消えていくんだね、鈍色の食器、本棚の木目をそっと撫でて、葉脈を想う、そういうとき、私はきっと形…

三月の化石

氷のようにきれいな読み物 ゆるやかに死んでいく花束 借り物の身体でぼくら 遊んでいるだけ かみさまのいない教会でキスを 古い詩集を持って 躍り疲れたぼくら 海の見える街で 罪を信じて 「ぼくらはずっとしあわせになる夢を見ていた」 ぼくの最期のことば…

1.618

いちばん醜いのは知識欲。次点で高潔な思想。宗教はヒトの発達段階において生じたのみに過ぎない。形而下のすべてが、ある事項によって規定されている。理性が思惟すべきあらゆる神と、存在が批准すべきあらゆる信仰を知れ。投擲された、或いは観測された唯…

プラトニックスゥイサイド

「許してあげたい」「誰を?」「僕と、それから君を」

排熱

「息をとめている」 「どうして?」 「息をとめている間は、許されている気がするから」

事項

貴女のその優しさが新しくさせた私というひとつの人格に、私はとても執着している。

モザイク

例えば此処にいない僕のことを、誰かが覚えていてくれたら、証明は簡単に綻ぶだろう、やさしい間違いを、ことばたちは隠してしまった、君の持つ街の形を、僕はまだ知らないけれど、古い詩集を持って、浴槽に沈んでいる花弁を掬いに行くよ、 スカートが揺れる…

寝息

安寧が耳に宿ったら、これほどの多幸感。 微睡みが貴女を守っていることが、 其処に私が在ることが、 たまらなくいとおしい。 どうか健やかに、そして穏やかに。 この病熱のままで。

無題

自分をここに繋ぎ止めているのはいつだって自分ではない誰かだ。 追記 : 見よ!この世で最も醜悪で下劣なこの脅迫を!嗚呼目も当てられぬ!驚くなかれ、この者もかつては真理の深淵を覗こうと勇んだ若人であったのだ!

拝啓

拝啓酒や煙草への憧れは、わからないから輝いていた。 香水のにおいを振り撒いていた近所のお兄さん、あなたはとても格好よかった。いつかわかると信じていたその香りの魅力を、私はついぞわかることはなさそうだけれど、あなたのにおいは今でも鼻腔をくすぐ…

三月の化石

「私はあの子になりたい」 三度目の春に彼女はそう言った。 「ぼくはずっと海が見ていたいな」 吐く煙は細く、淡く。油絵の勉強と称して行った植物園には、ネモフィラの花が咲いていた。 「学者なんて最低な生き物よ」 そう言って彼女は煙草を一本ねだった。…

ユリイカ、発声

自分以外の何かを嫌いになったことが一度もない、一度もないから、それがとてもこわい、知らないのってこわい、唯ひとつ嫌いなものになれたなら、君は特別になれるよ、でも君はきっと望まない、望まれた輪郭、求められた形状、そこにぼくはいるの、触れてい…

贅沢

しあわせになりたかっただけなんだよ みんなおもっていることだろう なにがだめだったんだよ

素敵なひとたちにたくさん好かれて、しあわせな少年は夢を見る、うまれた時から彼のねむりはあさい、大きな時計塔があって、取り囲むように広がる街、電線に洗濯物、ひび割れたコンクリート、廃車に住む男、駄菓子屋の電光看板、さびれた珈琲店、陶器で出来…

水族館

思想はいつだって宙に浮かんでいる、自由とは自由ではなく、沈黙とは沈黙ではない、名前を呼んで、三度だけ有機的な社会は笛を吹く、合図は英国紳士の足音、鉱物図鑑の157ページに君のパパはいるよ、走って行かなきゃきっと卵になってしまう、歌をうたう酒瓶…

日用品

写真だって文字だってみんな絵だって牧師は言った、構造主義者の殺人動機、水面で死んでいる風船、何人目までが私か、それだけを考えている、嫌いって感情を知りたかっただけ、ぜんぶから逃げたいって思ったら肺を汚せばすべて許されるから、煙草と花束はよ…

耽美派の手記

見るものぜんぶ燃えてしまえばいいって思うけど、一番燃やしたいのは自分だし、死にたいというよりは死んだほうがいいって思うけど、死んでなんかやらないとも思う。生きることが罰なんだよって戒めたあと、ただそうやって正当化をして、死にたくないだけだ…

婦人

小さな頃から、土が嫌いだったし海は怖かった、皆そうだと思っていた、クジラはすべてを見透かしていた、そうしてかみさまみたいに生きることを強いられて、全部喪うために手に入れたひとの話、何か掴んだような気がするたび、今死ねば永遠に自分のものにな…

汚濁の瞳

その者は致死量の優しさを持ち、狂おしいほど美しかった。 私が死んで、千年が経ってもその者は生きながらえているような気もしたし、つい明日には息絶えてしまうような気もした。 結局、私はきっとその者について、何も知り得なかったのだ。 その者は生来生…

枕木の代わりに死体を置きましょう。 どちらもぼくにはそう変わりはないから。 白無垢のような彼女が、ぼくは気持ち悪い。 小説の中でなら、いくらでも許してあげたのに。 それはぼくも同じかと思い直して、花を折る。 彼女は想う。 生と死の概念が反転した…

やさしくなんて

「死にたい」彼女は泣いた。 きっと随分前からそうやって生きてきたのだ。 「じゃあどうして泣いているの」ぼくは問う。 自分の物じゃないみたいに、声に温度はなかった。 「死は解放なんだろう? ならどうして泣く。生きるよりも、死ぬ方が楽だから人は死ぬ…

海と警句

朝か夜かもわからない。 海岸は静寂の縄張りだ。 ぼくは肺を汚していく。 神様の真似がしたかったんだね。 命なんて些事だと思いたくて。 海は胎動をやめてしまった。 老いた奇跡はこんなにも美しくて。 金属の匂い。 切なくて泣きそうだ。 芸術を君たちはし…

うら若き青年よ

(無機質な愛を食べてみたい)(飛びたいと死にたいは、きっとよく似てる)(剥離した性状)(欠乏した悔悟)(ねえ、君は何になりたい?)(そうやってずっと話していたかった)(燃える庭で)(さあ!)(神の葬儀を執り行おう!)(鐘が鳴り響いている)(人々は行進を始める)(…

ぼく

羨望、歪愛、憐憫、美学、憧憬、劣悪、異常、解剖、論理、希望、虚構、空洞、友愛、実験、空間、拒絶、深海、言説、理由、青色、乖離、霧散、食事、残響、同定、性欲、破壊、数式、言葉、熱量、自傷、道徳、回転、露悪、博愛、殺人、生活、感動、大気、世界…

くじらの骨

やさしいひとだけの世界になったら、きっと私は特別になれる。変わってるねと誰かが言った。生き方をみつけた気がした。そうしていないと死んでしまいそうだった。真空では音は鳴らない。やさしいなんて言わないで。死にたくなる。君たちはいつだって正しい…

お知らせ

詩以外に、益体もない思考や栓のない色々を綴るだけのブログを開設しました。 URLを付記しておきますので、よろしくお願いいたします。 『海の手記』 http://hijikaiumi.hatenablog.com/