海の見える街

意味とか価値とか、そういうのがあると最高に良い

賽子

ひさしぶりに実家に帰ると、庭にトマトが植えられていた。「お父さんが育ててるのよ」と母が言った。ふうん、と私は。「ねえ、今度は紫陽花を植えてよ。きっときれいだよ」そう打診したけれど、返事はなかった。

犬は頭がわるい。犬にかしこいだなんて、言ってやらない。私からすれば、犬にかしこいだなんて言う人間はみんな差別主義者だ。犬はばかだ。ばかだから、私なんかのことをすきになる。「明日はお前を洗ってやろう」そう言うと彼女は、すこし嫌そうな顔をした。

午前3時、室の灯りを消す。田舎の夜は深くて暗い。私は昔からこんな夜がすきだった。波の音が聞こえる。あ、今のはすこしだけ大きな波だったね、ひとり微笑む。階下で犬が寝返りを打った。今、夜は私のモノ。

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